“堕ち”と呼ばれて3 屋根から飛び降りて…その後
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彼女に残された選択肢は一つだけ…自宅の屋根から身を投げること。
原因は色々あったがもうどうでも良かった。
「だって死ぬんだし」全ての問題を片づけてくれる魔法の言葉だ。
ぽってり太った彼女の体では、二階の窓から屋根へ上るのは大仕事だった。
肩で息をしながらなんとか屋根の上に辿り着いたものの、そのままゴロンと横になり夜景を眺め始める始末だ。
動くのが嫌になってしまった。
あれからもう何時間も経っている。
空一面に広がった星が綺麗だとか、最後にスマホでカツカレーの画像を見ておこうとか呑気なことを思っていたし、雪が降ったら中止にしてあげてもいいわ、と空の上の神様をチラ見したりもした。
だが突然少女は深い暗闇の中に身を投じる。
なぜそのタイミングだったのかと言われれば、なんとなくとしか答えようがない。
ステーキの脂身の付き方ひとつで世界の色が変わって見える少女の心はいつだって気まぐれだ。
落下する身体がスピード感を増し心臓の鼓動が大きくなる。
地面に吸い込まれる瞬間、頭に浮かんできたのは裸体でまぐわう男女。
更に何十人ものオッサンがAV女優を追い回すおぞましい企画もの鬼ごっこの映像が駆け巡る。
彼女の胸を焦がし続けてきた名作AVのダイジェストシーンだ。
「私の走馬灯ってこれ!
?」と神様にクレームを入れたところで世界は暗転した。
体感としては一瞬。
一時の黒世界を挟んだのち一気に視界が広がる。
眼前には見知らぬ白い天井。
ベッドに横たわった自分の体から何本ものチューブが生え、体を取り囲む医療機器の禍々しさからかろうじて一命をとりとめていたことを知る。
なんだか神様にもう少しだけ生きてみたら?これラッキータイムね」と言われたような気がした。
そして彼女は退院後、これまで失敗続きであったダイエットを見事にやり遂げAV女優になった。
…と、そのようなデビューの経緯を聞かされれば、彼女が異端な女優であることにも腑が落ちた。
カメラの前で股を開いてアイドルになろうとした、そんじょそこらの大甘なタイプではない。
正真正銘AVに憧れて業界にやってきた稀有なケースで、初めて「玉屋レーベルの作品を見ている」とも言われた。
となれば、キモメンキモ男の頂点たる巨漢ブタマスクが彼女から求婚されていると誤解したのも仕方のない話。
そう、ドッキリ的に飲尿させたことも、豚の子種真正中出しなどの極悪プレイもただ愛を確かめ合っただけなのである。
撮影中に過呼吸を起こしたりもしていたが、まァ憧れの人物を前に緊張していただけだろう。
この先彼女のAV女優人生はどうなっていくのだろうか。
ファンクラブ開設だの同人進出だの言いながら○罪者へと転げ落ちて行くのか。
自称・役者で経営者で文筆家でえちえちストリーマーで(以下略)と名乗りを上げ、狭いコミニティでチヤホヤされながら悦に浸るのか。
結局食えず、ファンの身銭を巻き上げようとがむしゃらに乳を揺らしたり、ファンネームを叫びながらオナる不思議な生物になるのか。
飲み屋や風俗の広告としてAVを利用し身売りに励むのか。
それは分からない。
“まだ”分からない。
ひとまず現在は表現者だ。
末尾に“気取り”は付かない。
今は少なくともそう思える。
「あの屋根の上で死を覚悟した日からの延長戦が、これからも楽しく胸を張れる記憶でいっぱいなりますように」との思いで少女は今日もAV業界をテクテクと歩いている。
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